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Life and others

東北地方の厳寒地において、屋内でヒーターを使わず両生類を越冬させた話

注: 記事後半、カエルとかトカゲの写真があります

前回までのあらすじ

子供が虫に興味を示すのをきっかけに、大人の財力とノウハウでもって子供に色々と教えるようになってから、自分も昆虫飼育が趣味になりつつあるが、去年の冬にあることをしてみようと思い立った。

自宅は東北地方の山沿いにあり、冬季になると普通にマイナス気温を記録したりもする場所なので、ふつうに考えれば昆虫飼育にあってはヒーターなどの暖房を併用することが必然となる・・・のだが、

  • あえて暖房をつけずに冬眠させるという方法もある
  • 色んなレポートを読む限り、氷点下になったらただちに死ぬ・・・という感じでもなさそう
  • 温度変化を最低限にしておけば越冬できるのでは

という情報をもとに「ヒーター等を使わず越冬させてみる」ことを試そうと思った。

用意したもの

対象は自宅周辺で捕まえたアマガエルとニホントカゲ、カナヘビ。アマガエルと後者は別なケースで飼育しているので、お互いに捕食の心配はない。

エサはミルワームが切れたタイミングを見つつケース内へ補充、水だけは枯らさないように気をつける。排泄物については以下のようなものを床材にし、最低限雑菌などの繁殖を防ぐが、冬季なので高温高湿にならないことも加味し、そこまで積極的な清掃は行わない。

前述したが、ヒーターなど電源を必要とするものは一切使わない。自宅の廊下にスチールラックを組み立て、そこにケースを放置しておく。

冬眠のための施策

ネットで両生類の冬眠について色々調べると、

  • 温湿度計によるこまめな確認
  • 秋口にエサをたくさん与えておく
  • なるべく温度変化がないように気を使う

などといった TIPS が散見される。自分の場合は水苔によって湿度と寝床の確保、またケース下部にウレタンフォームを敷くことで、より湿度を確保し、なおかつ体温が逃げないような施策を行った。

ケース内の温度はどう頑張っても外の気温に引っ張られてしまうので、10℃以下になることは避けようがないが、少なくともウレタンと水苔の間に入っているぶんには、保温ができるのではないか、と当たりをつけたようなかたちだ。

なお水苔は乾燥した状態のまま、ちぎってフカフカの状態で入れておく。カエルがケース内の水場に行って戻ってくるとどうせ濡れるが、水苔全体がビッシャビシャだとそれはそれで寒いだけなので、乾燥したままで入れて大丈夫そう。

いざ冬に突入

自宅内は人間が活動をしている間はファンヒータなど暖房を焚くので24℃くらいにはなるが、夜や早朝などには0〜5℃あたりをマークする。それでも屋内なので、氷点下になることはほぼない。ケース内の水場については、氷が張るようなことはなかった。

冬とはいえ日差しの強い日もあり、その時は暖房を焚かなくても10℃を超えることがあったりする、そういうときにカエルはどうしているかというと、たまにコケの間から顔をのぞかせているような姿が見られた。

これは冬眠しているか/していないかでいうと、たぶんしていないのだが、代謝はもともと低くなっているので、そこまで体力をロスするような行動ではなく、たんにひなたぼっこをしているだけかもしれない。

湿度と水分、それに食べようと思えばエサのミルワームは置いてあるので、秋口と比べると「えらく寒くはなったが、水苔とウレタンのあいだに入っているぶんにはやりすごせる環境」みたいなものができていたのではないか、と思う。

12〜2月、晴天日も少なくなると、さすがに苔から顔をのぞかせる機会も減ったが、エサはたまに確認すると減っていたりするので、まぁチマチマ食ってるんだろうな、などと思ったりした。

冬を抜け春へ

3月、4月、5月とじょじょに暖かくなるにつれて、水苔の間からカエルがはい出てくるようになった。

当初 8 匹居たカエルは、5 月下旬の段階でなんと全匹もれなく越冬したのだが、半分の 4 匹は冬眠から目覚めたあと、エサをうまく消化できないかなにかが続き、じょじょに衰弱死してしまった。おそらくだが、越冬前にうまく栄養を蓄えられなかったのも、原因としてはあろうかと思う(量は与えていたのだが、写真の 1 匹だけめちゃくちゃ食う個体が居て、そいつに横取りされたりする)。

越冬自体は問題なくできても、越冬後目覚めたあとに弱って死ぬというのは事前情報としては解っていたし、そもそも自然界では越冬自体が厳しいわけで、まぁしょうがないのかな、という気持ちだ。

生き残った半分の 4 匹に関しては、6 月上旬に入って元気にミルワームをほうばったり、ひなたぼっこをしたりしている。一旦ウレタンを除去して水苔だけにしてやるものの、居心地がよいのか、引き続き水苔に埋まっている個体なんかもいて、このへんはまさに個体差だな〜と思うなどした。

ちなみにニホントカゲ、カナヘビも全匹越冬。こっちはちょこちょこ様子を見ていたのだが、冬の間は「とにかくみんな一まとまりになり、とぐろを巻いてひたすら寝ている」ような感じだった。エサはもとより、水すら飲んでなかったように思うが、ケース内に入れた水はしっかり減っていたので、チマチマ飲んだり食べたりはしていたんだろう。

わかったこと

なんとなく、自家冬眠というとものすごい綿密な計画や設備が必要なのではないかと思っていたりしたのだが、

  • 電源なしでも生き残れるやつは生き残れる
    • ただこれが自然界だったらまぁまず無理だろうなという気持ち
  • そういう意味ではウレタンと水苔は万能
  • 両生類は東北地方の厳寒地でも意外とノンヒーターでやれる感

あたりが今回得られた知見であった。

死んだ 4 匹の冥福を祈りつつ、今年も越冬するかどうか試してみようと思う。越冬後のエサもミルワームなど高カロリーなものでなく、ショウジョウバエなどからウォームアップしていくというのもアリかもしれない。

子供が捕まえてきたけど越冬させられないものか、と考えている人の参考になればと思います。